ケースメソッドとケーススタディの違い
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- ケースメソッドとは
「ケースメソッド」と「ケーススタディ」は似た様な表現ですが、それぞれ特徴の異なる似て非なる教育手法です。どちらも学習領域に関する現実の事例(ケース)をもとに、調査や分析、発表などを通じて学ぶことは...
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ケースメソッド
Case Method
ケースメソッド《Case Method》とは「ハーバード白熱教室」で日本でも一躍有名になった教育手法です。具体的には実際に起こった出来事(ケース)に登場する主人公になったつもりで考え、クラスで議論します。このケースに登場する主人公は何らかの意思決定に直面しており、もし自分が当事者ならばどう行動するかを考え、グループで議論し、クラスで話し合うことになります。ケースメソッドの授業に向けて何も準備もしなければ、授業内で発言することはとても難しいです。しかしきちんと事前にケースを読み必要な予習していれば、授業内では発言するだけです。知識修得だけを目標とし一方的に教員が話すのを学生が黙って聞くという授業ではありません。学生が主役のこの学びの方法では学生自らが主人公となったつもりで議論およびロールプレイを行い、学生主体の学修体験を追求し、世界観・視野を広げることを目標とします。
ケーススタディは以下の流れで進められます。
1.予習
2.グループセッション(Small Group)
3.コールドコール
4.クラスディスカッション(Large Group)
ケースメソッドでは授業開始前に教員から「ケースブック」と呼ばれる教材が配布されます。通常、ケース本文(教材)とアサインメント(課題)によって構成されており、ケースには必ず「主人公」が存在します。学生はケースを読み、教員が事前に設定したアサインメントに対する自分の考えを、主人公になったつもり予習、準備することが求められます。
<アサインメント例>
・ A社の受注を受けるか?受けないか?(経営学)
・投資家A氏は敵かそれとも味方か?(ファイナンス)
・ A氏への事業承継に対してあなたは賛成か?(リーダーシップ)
・事業拡大のために買収をするか?それとも自社開発をするか?(経営戦略)
授業の最初20分間をグループセッションの時間として設けています。数名の小グループに分かれ、予習してきたアサインメントに対する意見を交換し合い、クラスディスカッションに備えます。
「プレゼン準備時間」ではなく、ケースを共通情報として、参加者同士が自由に発言し「共に教えあう」場として運営します。
ケースメソッドではコールドコールが利用されることがあります。これはクラスディスカッション開始と同時に受講生1名がケースに関する質問に10分程度口頭で回答をするという制度です。ハーバード・ビジネススクールをはじめ世界中のビジネススクールが採用する授業開始手法ですが、ここでの発言内容によって授業への貢献度が認められ、成績評価に繋がることから受講生の徹底的なケースに対する予習を求め、そのモチベーションを高めるものです。
コールドコールが終了すると、教員主導でクラスディスカッションが開始します。教員からの問いかけに対して受講者が発言を求めて一斉に挙手する光景がNHK「白熱教室」シリーズで見られますが、発言は「教員」に対してではなく、自分の考えを「クラス全体」に主張する貴重な機会として捉えられます。そして成績もその個人の発言内容に応じて評価されていきます。
ケースメソッドに存在す以下のルールが、この学習方法の最大の魅力です。
1. 正解や不正解はない
2. 発言はクラス全体に対して
3. 授業への貢献度が成績に反映
1+1=2とならないのが実社会の常識。過去の事例(ケース)を教材とし、自分ならその状況でどう判断し行動するか、を追体験する事で経験値を高める事がケーススタディの醍醐味といえるでしょう。ケースメソッドで学ぶ/教える者にとって重要なのは「1つの正解を求めない事」この1点に尽きると思います。